佐渡で育まれる朱鷺について

朱鷺の歴史

2017年6月時点、259羽。
今日、佐渡での生息が確認されるトキの個体数です。(*)
かつて日本の空から姿を消したトキが、この佐渡でふたたび野生復帰という新たなを時を刻み始めた歴史に注目してみます。

(*環境省佐渡自然保護官事務局発表 )MOEecd9fcc348f6f4b33183f40a6c8fcdde

 

【はじめに ~ 朱鷺はこんな鳥~】

◆分類◆        ペリカン目 トキ科 トキ属
◆体長・体重・翼長◆  約76cm・雄 1.8Kg~2.0Kg 雌 1.4Kg~1.6Kg ・約130cm

◆朱(赤色)の鷺(サギ)という漢字で記し「トキ」と読まれます。全身は白ですが、羽を広げると
「朱鷺色」と呼ばれる薄紅色の羽が美しい鳥です。 
::::: 美しい羽は乱獲原因のひとつともなりました。:::::

◆食餌は肉食。水田や水路、あぜ道に生息するドジョウ、タニシ、カエル、サワガニ、バッタなどを
 食べます。一夫一妻のつがいで森の中で見通しの良い高い木に営巣する習性があります。
::::: 朱鷺には多様な生物が生息可能な昔ながらの水田、営巣に適した里山が不可欠でした。:::::


【明治、大正~昭和】 身近な鳥から野生絶滅へ

日本を含め東アジア一帯で普通に見ることのできる鳥だったトキは、いずれの生息地でも19世紀半ば以降急激に数が減り始めました。日本の場合、水田地帯の開発と森林伐採が急速に進んだことと、商用・食用の乱獲が重なったことが原因と考えられています。

明治41 1908 明治25年に定められた「狩猟に関する規則」の保護鳥に朱鷺が加わる
大正14 1925 「新潟天産誌」に「トキは濫獲のためダイサギ等と共に其跡を絶てり」との記述
昭和27 1952 特別天然記念物に指定
  35 1960 国際保護鳥に選定
  42 1967 佐渡市新穂村清水平に、新潟県トキ保護センター開設(後に現新穂村長畝に移設)
  43 1968 「キン」が宇治金太郎氏により捕獲、センター保護
  56 1981  1月、佐渡で発見された野生のトキ5羽を全て捕獲。
絶滅回避のため「キン」を含む計6羽の保護育成・人工繁殖を開始

detail0860_k01ii

【なぜ佐渡に最後のトキが生き残っていたのでしょう】
佐渡が国内最後の生息地となったことは、ひとつの島としては珍しく1,000m級の山々が
連なる山脈と深い森林に恵まれた島嶼であったこと、その地形に昔からの棚田が多数残り、
四季を通じ豊かなわき水のたまり場が点在しトキの食餌が保全されていたことなどが
挙げられています。

 

【昭和~平成】人工繁殖への挑戦

種を保護するため、人工繁殖への試みが始まります。佐渡で保護された全6羽のペアリングを試みますが、一夫一婦制で繁殖するトキのカップリングはこの6羽の中では成功しませんでした。そこで中国からも個体を借り入れるなど繁殖の努力は続きます。国内最後のトキ「キン」も寿命を迎える中、平成に入り日本でも続々と成功例が生まれ始めました。

昭和60 1980 「キン」のペアリング相手として、初めて中国からトキ「ホアホア」借り受け~ 繁殖は不成功
平成元 1989 中国で初のトキ人工孵化に成功
平成 7 1995 日本最後のトキ6羽のうち唯一のオス「ミドリ」死亡
平成11 1999 中国から贈呈された「ヨウヨウ」「ヤンヤン」ペア到着。日本国内初の人工繁殖に成功、同ペアから翌年にかけて計3羽のひなが誕生
  15 2003 日本最後のトキ「キン」死亡
  19 2007 野生復帰ステーション開設
保護センターの11ペアから、自然繁殖によるひな11羽含む計14羽のひなが育つ。

MOEd5e0ea1a9a1a7d5a208b6c1e2380ab5e

【日本のトキと中国のトキ】
「キン」の死亡により日本のトキは絶滅し、現在佐渡で育っているのは中国から贈られたトキとその
子孫たちです。日本産と中国産のトキのDNAを調査したところ、遺伝子の違いは0.065%という結果が
出ました。(*) この差は、例えるなら、同じ日本人一人ひとりの遺伝子が少しずつ違うことと同レ
ベルの差異なのだそうです。さらに昭和初期の佐渡には、中国のトキと同一の遺伝子を持つ個体
もいたことが分かっています。(**)
(*)(**) 兵庫医科大学・山本義弘教授(分子遺伝学)調べ/新潟日報モア 特集「羽ばたけトキ」


【平成20年~新時代へ】試験放鳥から自然定着、「純野生」の第三世代も順調に成長中

2008年、保護センターで順調に繁殖し続けてきたトキたちが、全野生個体の保護から27年間の空白期間を超えてふたたび佐渡の野山に放鳥されます。トキをシンボルに生きものと共生する環境づくりを進めてきた佐渡の地で、保護センターから巣立っていったトキたちは順調に群れの個体数を増やしています。

平成20 2008 9月25日 雄雌各5羽、計10羽のトキが自然に試験放鳥される
  21 2010 放鳥されたトキの営巣確認。自然下では1979年以来31年振り
      24 2012 自然界で36年振りのひな、ペア3組・計8羽の誕生が確認される
      26 2014 野外でのひな誕生が3年連続で確認される
2003 年に策定した「トキ野生復帰地域環境再生ビジョン」の目標「2015年に60羽の定着」を目標より1年早く達成

MOE725a24a77bf92b776808a4377ad8280a

【野生第三世代の誕生~新たな定着目標へ】
2016 年6月23日、野生下生まれ同士のトキのペア1組から生まれた「純野生」に当たるひな1羽の巣立ち
が確認されました。「純野生」の巣立ちはすでに6羽目。2016年現在ひなを育てていた、その他の野生下
生まれ同士のペア3組ひなもすべて、無事佐渡の里山に巣立っていきました。
また現在環境省では「トキ野生復帰地域環境再生ビジョン」に次ぐ「トキ野生復帰ロードマップ2020」が
新たに策定され、2020年(平成32年)頃に佐渡島内に220羽のトキを定着させることなどを目標に更なる
保護活動が始まっています。

「朱鷺と暮らす郷」を食べることが、トキを育てる

朱鷺と暮らす郷づくり認証米の販売では、米の販売1kgあたり1円が佐渡市トキ環境整備基金へ寄付され、トキの生息環境の向上に役立てられています。作る農家、販売するお店、そして消費者の朱鷺を守る思いをつなげることを目標に実施されており、多くの米穀店の協力のもとに実施されています。この米の販売を通して、生物多様性の大切さを浸透させる取り組みや、産地と消費者の相互理解を深めるための産地視察や交流も推進していくこととしています。